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◆◇◆ 五津井☆奮戦記・第一部「旅立ち編」 ◆◇◆


 人生、バカが得をする―――


【プロローグ「嗚呼、栄光ある人類の歴史かな」】


●第0話:「嗚呼、栄光ある人類の歴史かな」


 アバシア歴21年。

 人類はこの年、長年に望んだ悲願を叶えることになる。

 彼らは長くもの間、
 北からの侵略者《魔族》たちにより、凄惨なる支配を強いられていた。

 その年月は魔族の侵攻まで含めれば、優に8世紀!
 耐え忍ぶにはあまりにも長い時間であった。

 理不尽なる暴力と抑圧。響き渡る悲鳴と呻きの声。大地を染みる血と汗……。

 世界を覆う絶望の海の中、一縷の光明が射し伸びる。

 ――《勇者アカサタナ》

 神より伝説の聖剣《ダイナルダスター》を授かりし、光の英雄。
 愛と平和の天使。祝福されし偉大なる人類の守護者。

 後の世にて救世主と呼ばれる彼は、災いの元凶なる魔族らを千切っては投げ、
 殺しては殺し、更には殺しまくった。容赦なく。そりゃもういっぱい。

 彼の歩く道には、常に紅き正義の泉が湧き上がり、
 その泉を民衆が喜びの歌と共に泳ぎ続く。

 その勢いは留まることを知らず、
 時の大魔王バラレン率いる魔族軍を容赦なく殲滅&誅殺して進軍す。

 やがて彼らは、北にある決戦の地《アールグレイ》にて、
 大魔王バラレンと対峙するに至った。

 その戦いは熾烈を極め、北の白きキャンパスを紅色の絵の具で無尽蔵に塗りたくる。

 三日三晩という意外と短い戦いを経た末に、ついに大魔王バラレンは力尽き倒れる。
 《聖母》は彼を北の大地へ永久的に封印し、その勝利の歓声に酔いしれた。

 だが、その代償は少なくは無かった。
 勇者アカサタナもまた大魔王との激闘で力尽き、大地の抱擁にその身を委ねたのだ。

 栄誉ある死。

 アカサタナはこのとき真(まこと)の英雄となった。

 民衆は彼の死を悲しみ、彼の遺体を大々的に埋葬した。
 近年の王たちですら霞むほどのそれは大きな大きな葬儀。

 荘厳なる旋律、静謐なる民たちの声、優麗に彼を讃え謳う吟遊詩人たち。
 あらゆる音という音が絡まり、美しく、悲しく、彼の死を包み囲んだ。

 大陸中の人々が集まり、その葬儀は一ヶ月続いた。

 彼の功績は末代まで誉れある伝説として語り継がれる。

 世界は彼の功績を讃え、彼の誕生年を栄えある人類たちによる世紀の元年とした。

 その暦の名前は《アバシア》――

 グリランド語で“世界”を冠する言葉。

 この偉大なる英雄とその地に生きる人々が、
 己の信念を貫き、自由を手に入れ、何気に虐殺もした大地。

 それがこの物語の舞台となる大陸の名前である。


<第1話へ続く...>


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