|
【第ニ章「魔王と生徒と食い逃げ犯」】
●第6話:「夜の帳にうれしはずかし笑い声……&悲鳴」
夜。
アーグトリ市内はかつてないほ恐怖に包まれていた。
――《魔王》らしき敵の首都襲撃。
それはアーグトリ市内の誰もが想像できなかった最悪の事態だ。いや、想像したくなかった事態、である。
魔王であるかどうかはあくまでも噂に過ぎない。
しかし事件当時、現場にいた市民が聞いた話では、兵士たちの声から何度もその恐るべき単語が飛び交っていたという。
人々は各々の非難場所へと逃げ込み、不安と恐怖に身を震わせ、寄せ合いながら王国より発せられるであろう報告を待っている。
いくつかある避難所の一つ、ミルドラン学園。
この学園の性質上、市内おいて最も防衛機能の高い施設の一つである。
そして今、体育館では学園関係者以外も含めた多くの民が布団や布を敷き詰め集まっている。
学園の生徒であるウリーとコーリもまたこの避難所に身を寄せていた。
「はい、コーリ。支給のスープ」
「ん。……ありがと」
体育館の端を陣取っていたコーリにウリーは学園から配給されたスープを手渡す。
ウリーはその隣に座って、自分の分のスープに口をつける。
「さすが学食から支給しているだけあって、おいしいなぁ」
「そうだね」
比較的速いペースでスープをすするウリーと違い、コーリはほとんど飲もうとはしなかった。
《魔王》と思しき敵が西門を襲撃したその時間。
ウリーは昨日に引き続き、教室の掃除を行っていた。監督はもちろんコーリ。
帰宅部の彼は、本来ならばとっくに自宅で漫画を読んでいるころだ。だが昨日の約束もあって、すぐに帰ることは決して不可能なことであった。
今日、新刊でるんだよなぁ、早く帰りたいなぁ、と思いながら、油断なく見張り続けるコーリが怖くてしぶしぶ箒を動かすウリー。
「(まぁ、当番は僕一人ってわけでもないし、そこまで時間かからないし……)」
“妥協”という言葉を思い浮かべながら、ウリーは掃除をせっせとこなす。
そんな時、遠くから響く轟音とすぐに発せられる警報ベル。
何事かと周りの生徒達と顔をあわせていると、校内放送が流れ、在校生徒はすぐに体育館へ集まれとの指示。
駆け巡る不安と憶測。
学生ゆえの好奇心。
様々な感情が交叉する中、ウリーたちはその指示にならって体育館へ向かい現在に至る。
避難勧告からすでに数刻経った現在だが、謎の襲撃があったという連絡以降の新たな情報は未だ発せられていない。
噂で流れているとおり、本当に“魔王”による襲撃なのか、それとも他国からの協定違反による攻撃なのか。はたまた他の原因による事故なのか――
数多くの人々の言葉が通り過ぎ、巡り、何周も何周もぐるぐる館内を囲い覆う。
実のところ、噂の中で一番有力なのは“他国からの侵略”だった。
《魔王》という過去の不確かな存在より、どこかきな臭い動きを見せているゴーネリア神聖帝国。
エイマルに不満を持つ南部北東のタケシム王国などなど。
火種となりそうな地域が見え隠れしている。
生誕祭に合わせて何か大騒動を起こす可能性もあるのではないかと、知ったかぶりな識者たちは言を投げ合う。
とどのつまり、魔王復活という御伽噺より、同種族による悪意のほうが私たちのリアル(笑)ということだろう。
「ど、ドルージとかは大丈夫なのかな……?」
体育館に来てからすっかり静かになってしまったコーリに、ウリーはなんとか場を和ませようと頑張る。
彼は普段とは違う彼女の態度に終始戸惑ってばかり。
「部活、だったからいるんじゃないの?」
小さな声で答えるコーリ。
無理矢理反応しているとしか思えないコーリの声に、ウリーは困ったなと、小さくため息をつく。
「あ、ああ。そうだねっ! うん、きっとそうだっ!! ちょっと人が多すぎてわからないけど、きっとどこかにいるよねっ!」
「……うん、そうだね」
「あ、は……」
再び途切れる会話。コーリはもうスープに手をつけていない。
「(まさか、ここまでコーリが落ち込むなんて……。僕がなんとかするしかない、よな……)」
うつむき加減の彼女の表情は暗く、その内心を読み取ることができない。いや、わからない。
「ま、魔王とか侵略とかいっても、まだ噂だろ? 単純に事故かもしれないし。
それにさ、仮にそうだったとしても軍の人たちがなんとかしてくれているんでしょ? 絶対負けないって、ねっ?
ほら、君のお父さんも、僕の父さんだっているじゃん! 二人ともすっごい強い魔術師なのは知ってるだろっ?! 僕達が信じなきゃ皆やる気なくすってっ!」
あたふたしながら、あーだこーだと励ましにかかる。
その姿は、別れた彼女になんとかよりを戻そうとがんばる惨めな元彼のよう……。
そんな、ウリーの奮闘はしばらく続く。
ああ、僕だって魔王怖いのに……。あの新刊読めないまま殺されるなんて絶対に嫌なのに……。
「だ、だからさ、コーリ! こういうときこそ明るく行くべきだと僕は思うんだよねっ! うん! ……ど、どうかな?」
「…………」
「…………あ、は、は……」
「…………」
「…………」
沈黙。
ウリーは悟った。
今自分はこの沈黙を以ってして完膚なきまでに敗北したということに。何に対してかはともかく。
「……ねぇ、ウリー?」
ずっと押し黙ってウリーの言葉を聞いていたコーリが小さく呟く。よく見るとなんか小刻みに震えている。
「な、なにかなっ?」
ちょっとだけ嬉しくなって、思わず声が裏返る。正直かなり痛いと思った。
「ぷぅ……っ!!」
そのセリフが止めだったのか、いきなりその場で噴出すコーリ。
「え……? え……?」
彼女の急変に目を点になるウリー。な、なにがなんだか……。
「あ、あんた……ぷ、くく……そ、そんなに大声で、ワ、ワタワタして……くくく……恥ずかしく、ないの?」
「……え?」
その言葉に周囲を見渡すウリー=コスター16歳。
彼の視界にはたくさんの学園生が、口元を歪めながら見つめていた。
「あ、み、みんな……?」
「おいおい、ウリー……くく、お前、本ッ当に尻にしかれてるんだな……っ」
こらえきれないといわんばかりに、腹を両手で押さえる男子学生。
「ど、ドルージッ?! い、いつの間に……っ」
そこにいたのは、友人のドルージやクラスの仲間たちだった。
彼らは見た目も性別もまちまちであるが、顔を真っ赤にしてぷるぷると振動していたことは全く同じであった。
「あははははははっ!! 捨てられた子犬のようだったぜっ、お前!!! うは、うははははははは……っ!!」
「絶対、できてるとは思ってたが、まさかここまでとは……っ! いいぞ、ウリーッ! 頑張れよっ!!」
「こ、コーリ、よかったねっ!! こんなにも、ウリー君に愛されて……っ!!!」「罵って下さい」
「ば、ばーかっ!! 違う、くく、わよっ!! で、でも、お、面白すぎ……っ!!! あははははは……っ!!!」
「…………」
ウリーは気付いた。
自分が見事にいいさらし者になっているということを。
「い、いつから……?」
もう我慢の限界だったのだろう。
いつの間にか飲み終わっていたスープの鉄製の皿を床にカンカン叩きながら大爆笑しているコーリに、彼はジト目で尋ねる。
「あ、あはははははは……っ!! 『ま、魔族っていっても……』ってあたりからよ……あははっ!! ど、ドルージがそのときにウリーに声掛けたのに、あんた全く気付かなくて……っ!!!」
「うははははは……っ!! お前、俺が何度お前を呼んだと思ってる……っ?!!! お前が悪いんだぜ! ここまで気付かないのには、ホンットありえねぇーーーーっ!!!」
彼らの話によると、ウリーが必死にコーリを励ましているのを見つけたドルージが、何度か声を掛けたらしい。
コーリのほうはすぐに気付いたのだが、ウリーのほうはちょうど死角というのもあって全く気付かない。
そのため、何人ぐらい集まったらウリーは気付くのかと策士・ドルージは考え、一人また一人と彼の背後に友人達を呼び寄せた。
しかし、どんなに集まってもウリーが気付く気配はなく、あまりにも滑稽なその姿に耐え切れなくなったコーリは、ついに爆笑。これが全ての真相である。
「………………っ」
あまりにも酷い羞恥プレイに、ウリーの顔は紅生姜並みに天元突破。
もう穴があったら入りたいなどという生ぬるいものを超え、すべてを滅ぼし、自らも崩れ落ちたかった。
「く……くそっ!! うわぁぁぁぁぁぁぁ……っ!!!」
思わずウリーはその場を駆け出す。
もうここにはいられない。
僕はもうここでは生きていけない。
行こう、僕だけの楽園(ティル・ナ・ノーグ)に……。
背後ではウリーを笑いながらも止めようとする声がするが、ウリーはお構いなしに外へと出て行った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
非難命令が発せられて、早数時間。
襲撃の報を聞いた王室は、即刻予定していた会議を中止。代わりに本件における緊急対策本部を設置。
幸い、この会議には国の重鎮ばかりが揃っていたので、対応は速やかに行われた。
結果、彼らは『不可解な点は多いが、侵入者はどこかで潜伏しながら国の重要機関――つまり王城を落とそうとしている』と判断。
第一級厳戒令を発足。
直ちに国中の兵士が避難所及び、王宮の防衛。
そして市内に潜伏していると思われる犯人のあぶり出しを急務と定める。
防衛以外の兵士は総力を挙げて市内の探索へと動きだした。
襲撃があった西門の姿は、まさに信じられないの一言だった。
一個師団の魔術師たちによる攻撃にすら余裕のよっちゃんで耐えられる設計で作られていた城壁は、今はもう見る影もなく。
大きく開いた巨大な顎(あぎと)を、後続でやってきた兵士達に向けていた。
付近には、まばらに倒れた兵士達。マギレス隊の者たちだ。
隊長であるマギレス中尉も含め、例外なく彼らの意識は奪われていた。
城壁の上で巡回していた兵士達も体を強かに打ち、今はただうめき声が静かに響き渡るのみ。
だが幸い負傷者は多かったものの、死者はいなかった。
駆けつけた一団はすぐに味方の兵士達の救護と周辺の警戒を厳戒態勢で敢行したが、犯人らしき人物は見つからない。
まだ近くで息を潜めて隠れているのかもしれないが、既にこの場を立ち去り市内の他の場へ移動している可能性のほうが高い。
そう判断した緊急対策部は、門の整理と警戒のためにいくらかの人数だけを残し、その捜査網を市内全体へと広げる方針を採った。
現場の兵士達は全て意識不明。市井の犯人の目撃者は今のところ皆無。
しかし、敵は兵士達に止めを刺していなかった。
500年近くにも渡る伝承や叙事詩を鑑みるに、魔王や魔族は人間を憎んでいる。
特に先の戦いで逃れた魔族などは、その仕打ちに対して根深い恨みを抱いていることだろう。
そう考えると、全員はともかく何人かは殺されていてもおかしくなかったはずだ。
もし今回の襲撃が本当に魔王もしくは魔族の仕業だとしたら、このようなことは有り得るのだろうか?
逆に犯人が魔王だとして、それでも敢えて人を殺さなかったということはどういった事情があるのだろうか?
それが、仮に魔王や魔族ではなく他国からの侵略者だとしても同様のことが言える。
その場合はもっと効率のいいやり方だってあったはずだ。生誕祭が近いのだから……。
襲撃者が誰なのか、そもそもそれが魔王なのか――?
当人以外知る由もなく――
市内には、謎と不安が渦巻き揺蕩う。
………………………
………………
………
…
アーグトリ市内は既に晩方。
本来なら西側の歓楽街は熱を帯び、漆黒の夜空を妖しく照らしている頃だ。
しかし、今この夜陰を照らすのは松明の炎と、魔力の灯り。
王城から派遣された兵士や魔術師たちが、この周辺を徘徊していた。
灯の点かない暗い店たちを隈なく見回し、市内に侵入したと思われる犯人を探す。
そんな建国史上、最大とっていっても過言ではない第一級厳戒態勢を受け、歓楽街の中を一人の兵士が巡回している。
マンダム! マンダム=クレイジャン!! 階級は二等兵、最下位だッ!!
原則として隊ごとに固まって巡回を行っているのだが、極度の緊張が原因で突然尿意がおもよおしになられてしまった。
どうしようもない生理現象なので、彼は隊長に一言断ってから、近隣の店でトイレを借りていた。しかも一人で。
「最低でも二人一組」という隊長の言葉は、あふれ出る尿意の前には無力なのだ。
なんとかスッキリ爽快になった兵士マンダム。
だが戻るとそこには既に隊はなく、彼は見事にはぐれてしまった。
マンダムは困った。
戻ってきた場所には隊長が書き残したメモがあったのだが、その場所がわからなかったのだ。
真面目一辺倒で生きてきた兵士マンダムは、この歓楽街のことはよくしらない。というか仕事以外で来たことがない。
多少涙目になりつつもマンダムは諦めて、一人どこにいるかもわからない魔王(?)に怯えながら自分の隊を探す旅へ出た。
ただでさえ冴えない顔を、八の字眉にしているマンダムは誰がどうみても情けない姿。よく見ると少し馬面だ。どうでもいいけど。
ガタガタ震えながら、暗く静かな歓楽街を一人さ迷う。
「でないでくれよぉ……でないでくれよぉぉぉ……」
ぼそぼそと震えた声で呟きながら、マンダムはメモを見る。
「『《フンドシ亭》方面へ向かう。用が済んだら急いで合流するように』……ってフンドシ亭ってどこだぁあぁあぁ……?
というか一人くらい待っててくれよぉおおぉぉ……うぅうぅう、でないでくれよぉおぉお……でないでくれよぉぉおおぉおぉ……」
へっぴり腰で路上の壁に右手をつけながらズリズリと歩く兵士マンダム。
彼の有能無能はともかく、団体行動が主とする軍人として隊長の行動はどうなのか、ちょっぴり疑問だ。
見ていて可哀想なぐらいガタガタ震えるマンダムだったが、しばらくすると他とは違って一件だけ光が漏れる店を前方に発見した。
「お、おぉぉぉおぉおお……? あ、ああああれは、光……? だ、だだだだ、誰かいるのかぁぁあぁぁあああア???」
まったく呂律の回っていない口調で、兵士マンダムは前方に意識を向ける。
年季を感じる古い木造の二階建て。歓楽街と宿場街の境にあたるその場所には、周囲より比較的大きく目に立つ一軒の店が建てられていた。
「ああぁあぁ……あの看板んんんン? ふ、《フンドシ亭》ぃい……?」
一階はオープンテラスになっているその店の壁に立てかけられた看板には《フンドシ亭》と大きく筆で書かれていた。何気に達筆。
「あああぁあぁああ、アソコかぁああぁああ。た、隊長が言ってた……」
あふれ出る安堵の感情に涙が溢れる兵士マンダム。
そのただでさえ恵まれない顔はくしゃくしゃに歪む。
「た、たいちょーーーっ!!! ま、マンダムもどりま……」
ドゴォッ!!!!!!
パリーンッ!!!! ドスンッ、ドスンッ、ぐちゃっ!!!
ようやくの仲間達との合流に、両手を挙げて走り出したマンダムだったが、彼の目の前を一つの影がガラスを割って飛び出てくる。
「え?」
何度も地面をバウンドして、やがて動かなくなったその影は兵士マンダムのよく知る顔。
「た、隊長ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…………っ!!!!!!!!」
マンダムはその人物に駆け寄り抱き起こす。顔は血まみれで、ぎょろりと白目を向いた彼の年下の上司に、兵士マンダムは絶叫した。
「ようやく、こいつで最後か……まったくワシの聖地を荒らすなど100億年飛んで1年早いわ」
「むぐむぐ……う、うむ。こんなに……はぐはぐ……うめぇ料理を出す……ガツガツ……店から……んぐんぐ……出てけなんて……ごっくん……信じられないなっ!」
「…………あ」
店内から現れる二つのシルエット。
マンダムからは逆光で彼らの姿を見ることができない。
「んん〜? まだ一匹、ネズミがおるのう? 貴様、ソイツの仲間だな……?」
シルエットの一人がマンダムに気付く。その渋い声と落ち着いた口調からすると中年男性であろうか。
「ん、んぐ。あ、ああ……ガツガツ……なんか『隊長』って……もしゃもしゃ……言ってたぜ……ボリボリ」
もう片方のシルエットが答える。何かを必死に食べているようでよく聞き取れないが、その声には気のせいか聞き覚えがある。
「あ……あ……」
マンダムはその声を聞いてから“な ぜ か”震えが止まらなくなる。なんだ、この恐怖……? 怖さが……止まらない……。
「ほほお」
ギラリ。
何故か中年男性と思われるシルエットからそんな音が聞こえたような気がした。
マンダムは心の芯から来る得体の知れない恐怖に声も出せずただただ震える。
「じゃあ、お前さんでラストじゃけんのう……。この“フンドシ亭”を守るのはこのワシじゃ……っ」
そう言い放つと共に自分に向かって飛び掛るシルエット。
一瞬、マンダムの視界の隅には店の影で隠れていた不思議なオブジェが映る。血みどろで仲良く積み重ねられている隊の仲間達だ♪
「あ……あ……」
「我がフンドシの塵となられぇぇぇぇえぇええぇぇえい………………っ!!!!!!」
「アアッ、アーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!!!」
兵士マンダムが最後に見たのは、赤くたなびく布だった。
………………………
………………
………
…
兵士マンダムが鼻血を噴いて白目を向くことになってしばらくした後。
フンドシ亭の入口にて。
「ふぅ……まったく。いきなりやってきて『出て行け』だと? ワシの聖地を何だと思っているんじゃ、この国家の狗どもめ」
「むしゃむしゃ……ん? こいつ……ガツガツ……どこかで見た気がするな……はぐはぐ」
「む? なんだ? こいつらお主の知り合いかの?」
「んー……もぐもぐ……どこかで見た気もするが……もちゃもちゃ……気のせいだな、うん……ばくばく」
「なるほどのう……。それよりお前さん、さっきから沢山うまそうに食べてくれているのはいいのじゃが」
「ああ……、がつがつ……それには及ばない……ごくごく……、ここに途中飯なくて……はぐはぐ……かれこれ三日は……んぐんぐ……食ってないからなっ、プハァ!!」
「いやそうではなくての。ワシの店は安くて美味いがモットーじゃが、流石にいい額になるぞい? ちゃんと金はあるんじゃろうな?」
「………………」
「………………」
「………………………」
「………………………」
にこ☆
「食い逃げダッシュッ!!」
「く、食い逃げじゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………………っ!!!!!!!!」
魔王云々はともかく、今日もまた一つ犯罪の止まないアーグトリ市であった。
<第7話へ続く...>
|